大阪高等裁判所 平成8年(ネ)529号 判決 1997年7月31日
東京都千代田区<以下省略>
控訴人
大和証券株式会社
右代表者代表取締役
A
神戸市<以下省略>
控訴人
Y1
右両名訴訟代理人弁護士
阿部幸孝
兵庫県<以下省略>
被控訴人
X
右訴訟代理人弁護士
山﨑敏彦
主文
一 原判決を次のとおり変更する。
二 控訴人らは、各自、被控訴人に対し、七五万一二七〇円及びこれに対する平成元年三月一六日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
三 被控訴人のその余の請求をいずれも棄却する。
四 この判決の第二項は仮に執行できる。
五 訴訟費用は第一、二審を通じ、これを五分し、その三を被控訴人の、その余を控訴人らの各負担とする。
事実及び理由
第一 申立て
一 控訴人ら
1 原判決中、控訴人ら敗訴部分を取り消す。
2 被控訴人の請求を棄却する。
3 訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。
二 被控訴人
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人らの負担とする。
第二 当事者の主張
次のとおり補正するほかは、原判決の「第二 当事者の主張」に記載のとおりであるから、これを引用する。
原判決二枚目表末行の末尾の次に「被控訴人は、ワラントのような危険性の高い商品を希望しておらず、ワラントについての知識もなく十分な取引経験もないから、本件ワラント取引は被控訴人につき適合性がない。」を加え、同裏一〇行目の「理解しておらず、」から同一一行目の「それにもかかわらず」までを「理解していないにもかかわらず」と改める。
第三 証拠関係は、原審及び当審記録中の各証拠関係目録記載のとおりであるから、これを引用する。
第四 当裁判所の判断
次のとおり補正するほかは、原判決の「第三 当裁判所の判断」に記載のとおりであるから、これを引用する。
一 原判決四枚目表末行の「原告は、」の次に「元裁判官・元弁護士のB(以下「B」という。)の妻で、」を加え、同裏四行目の「主として、」を削り、同行の「転換社債等の債券」を「転換社債、外国債券、外国株式等証券会社で扱うほとんどの証券」と改め、同七行目の末尾の次に次のとおり加える。
「また、被控訴人は、新日本証券株式会社(以下、「新日本証券」という。)との間においても、昭和五六年一二月からはB名義の口座を、同五八年七月からは被控訴人名義の口座をそれぞれ開設し、多様な証券取引を多数回繰り返して行っていたところ、いずれの取引においても、取引の窓口は被控訴人とされていたが、証券の種類、数量、価格、取引時期等の決定にあたっては、被控訴人はBとも随時協議しており、証券や現金の受渡しにBが関与したこともあった。(乙第二五号証の1、2及び第二六号証の1、2)」
二 同四枚目裏八行目の「本件前に行った」の次に「控訴人会社との」を加え、同末行の「小田急ワラント」及び同五枚目表三行目の「住友電工ワラント」の各前に「B名義で」を、同九行目の「購入することとした。」の次に「そして、そのころ千代田化工建設の株式を二七六万円で売却し、右代金を高周波熱錬の株式及び本件ワラントの購入代金に充てることとした。なお、」をそれぞれ加える。
三 同五枚目裏初行から二行目にかけての「本件パンフレット」を「「分離型ワラント」と題するパンフレット(乙第六号証、以下、「本件パンフレット」という。)」と改め、同行の「購入代金」の次に「の不足分八万二〇三七円」を加え、同三行目の「乙第四号証」を「乙第六号証」と改め、同七行目冒頭から同五枚目表三行目の末尾までを次のとおり改める。
「7 控訴人Y1は、本件ワラントの勧誘時及び確認書の徴求の際に、被控訴人に対し、ワラントが株式を買い受ける権利の売買であること、値動きが大きく、投資変動率の高い商品であること、為替の影響を受けることを説明したが、行使期間があり、期間が過ぎると無価値になることの説明はしておらず、他方、被控訴人も控訴人Y1に対し、何らの質問もしなかった。
8 被控訴人は、新日本証券との間でも、次のとおりワラント取引を行っており、その時期は本件ワラント取引の前後にわたっている。
(一) 昭和六三年一月二二日、被控訴人名義で森永乳業ワラントを一一八万〇三〇〇円で買い付け、平成元年四月二五日これを売り付けて、二七万四二九二円の利益を得た。
(二) 平成元年四月三日、B名義で日商岩井ワラントを一六二万三一二五円で買い付け、同二年一月八日これを売り付けて、八七万一八八九円の利益を得た。
(三) 同年一二月一一日、被控訴人名義で長谷工ワラントを四六万六〇〇〇円で買い付けた。
(四) 同二年一月八日、B名義で日本電気ワラントを二〇六万四一一二円で買い付けた。
(五) 同年五月一六日、B名義で住友化学ワラントを一一四万三七五〇円で買い付けた。この買付は、本件ワラントが値下がりしたため、損を少なくする目的でいわゆるナンピン買いをしたものである。
右(一)の取引は、新日本証券の担当者Cの電話による勧誘によって行われ、その際、右Cはワラント取引の仕組み等についてほとんど説明をしなかったが、被控訴人はBに相談することもなく、即座に勧誘に応じた。新日本証券は、平成元年五月中旬ころまでに、同年四月三日付けでB名義の、同月二日付けで被控訴人名義のワラント取引に関する確認書を徴求しているが、右確認書にはBの筆跡による署名と押印がなされており、「私は、貴社から受領した外国新株引受権の取引に関する説明書の内容を確認し、私の判断と責任において外国新株引受権証券の取引を行います。」との文言が印刷されている。
右(三)ないし(五)のワラント取引についても、被控訴人と新日本証券との間で本件同様の訴訟が係属している。(以上、乙第二五号証ないし二八号証、甲第一三ないし一五号証、)」
四 同六枚目表九行目の「分離型ワラント」から同末行の「作成されていたが」までを「本件パンフレットをワラント取引をする顧客に交付していたが」と改め、同裏初行の「ものではなかった」の次に「ものの、行使期間があり、それを過ぎれば無価値となることが記載されていた」を、同四行目の「ワラント取引」の前に「権利行使期間及び右期間経過後は無価値となることを含めて」をそれぞれ加え、同七枚目表三行目の「特質」を「危険性」と改め、同裏二行目の「さらに、」の次に「被控訴人が本件ワラントを購入する以前にB名義で行った前記二回のワラント取引においても、当時の控訴人会社の担当者がワラントの危険性について説明した旨の主張立証はないこと、」を、同八枚目表七行目の「原告」の次に「ワラント取引の危険性について」をそれぞれ加える。
五 同裏一〇行目の「の内容、ワラント取引の特質、特にその」を「取引の」と、同九枚目表三行目の「呈していたため、」から同五行目の「相対取引であることの」までを「呈していたのと、控訴人会社の社員教育が十分でなかったこともあって、被控訴人に対し、権利行使期間があり、その期間が経過すると無価値になること等ワラント取引の危険性についての」とそれぞれ改める。
六 同裏一行目の「相当程度の株式等の取引」を「多種多様な証券の多数回の取引」と、同二行目の「あったという」を「あって、証券取引の危険性を十分認識できた」とそれぞれ改め、同九行目の「注意義務違反の内容」の次に「並びに控訴人Y1については、被控訴人の前記のような過去の取引経験及び弁護士である夫Bの教示等により、被控訴人が既にワラントの知識についての相応の知識を有していたものと考えても無理からぬ事情があったといえること」を加える。
七 同一〇行目の「五割」を「六割」と、同一〇枚目表三行目の「五割」を「四割」と、同行の「八一万四〇八七円」を「六五万一二七〇円」と、同五行目の「九一万四〇八七円」を「七五万一二七〇円」とそれぞれ改める。
第五 結語
以上によれば、被控訴人の控訴人らに対する請求は、控訴人らに対して各自七五万一二七〇円及びこれに対する平成元年三月一六日から支払済みまで年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり、その余は失当として棄却すべきである。よって、これと異なる原判決を右のとおり変更し、訴訟費用の負担について民事訴訟法第九六条、第八九条、第九二条、第九三条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 笠井昇 裁判官 最上侃二 裁判官 永田眞理)